新渡戸稲造『修養』を緩く読む

新渡戸稲造『修養』(たちばな出版)を見ながら、およそ1日1ページを目標に緩い言葉づかいにするブログ。

39〜40 第1章 青年の特性 「青年」の意義

第1章 青年の特性
1.青年の第一の特性

青年の意義

 青年!
 青年という言葉は、よく人が使う言葉であり、また何とか青年会というものも各地に盛んに組織されているが、青年とか青年会とかいうのは一体どういうものなんだろう。青い年と言うからには、老人を白い年、赤ん坊を赤い年ということもありそうだが…。この青年という言葉の起こりは、そう古くないと聞いている。熱心な人々という点から見たら或いは赤年、潔白なる人々という点から見たなら白年と言い、それでその集会を赤年会とか白年会とか名付けそうなものなのに、普通にみんな青年とか青年会とか言っているのが面白い。

詩経(しきょう)』に「青々子衿(せいせいしきん)」という句があるそうだ。若い学生は青の衿の服を着ていたから、学生を青衿子と呼ぶのだそうだが、漢書では青雲の士とか青雲の交わりとか、または青眼とかいうように、青は良い意味に使っている。青年ということは、まだ先の分からない、広い、青々と芽吹いた草葉の意味から生まれた言葉だと思う。青は春の色で、中国の古い本でも、春を青帝(せいてい)と言っている。

 緑なるひとつ草とぞ春は見し
  秋はいろいろの花にぞありける

    この歌のとおり、青年というのは、ちょうど春の野原のように青々として、それがどんな種類の花を開くか、どんな性質の実を結ぶか、つまりいかなる向上発達を遂げるか分からないという、将来に大きな望みのあるところが青年の青年たるゆえんである。

    言い換えれば、青年は大きな希望抱負をもっている人を言うので、年齢の多い少ないは関係ない。だから希望のない人はいかに若年であっても、片足を棺桶に踏み込んでいるのと同じようなものだし、希望さえあれば30歳になっても60歳になっても、青年というべきだ。

参考:『修養』新渡戸稲造(たちばな出版)