新渡戸稲造『修養』を緩く読む

新渡戸稲造『修養』(たちばな出版)を見ながら、およそ1日1ページを目標に緩い言葉づかいにするブログ。

57-58 大いに伸びる青年は、元気をためる

57-58

大いに伸びる青年は、元気をためる

 


「人間が世渡りするには、

スラリとして、

付き合いやすくなければならない。

 

多少の悪いことをすることで、

人の気持ちに寄り添うことができ、

世渡りのヒケツを学ぶものだ」

と言う人がいる。

 


このような間違った思い込みは、

かなり広くやられている。


しかし、これは人の弱点につけ込み

低レベルな交際をさせようとする心だ。

 

 


円満円滑とかいえば聞こえは良いが、

実は

自分の本当の力を

ダメにして捨ててしまって、

そのとき、その場合に都合のよいようなことばかりして、

「酒を飲め」と言われれば「いいね」、

「たまには悪い場所にも行け」と言われれば「それもいいだろう」というように、

たとえ最初に自分で思って決めたわけではないにしても、人についていって

だんだんと深みに落ちていく。

 

そうやって

仲良し円満と安心しているうちに、

いつしか自分の最優先のペースは

崩れ落ちてしまって、

いざというときに自分を守ってくれる居場所がなくなる。

円満に世渡りしながらやってると思っているが、

その人の品性は

すでにとっくの前に堕落しつつあると思う。

 


もちろん、

いらない場面で頑固に主張することを

ほめてはいない。

 

だが、

世の人と笑い興じているときにも、

いつも区画を大切にして、

「ここまではいい。いくら入ってきてもよい。

しかしここから中は許さない。

一歩でもこの中に侵入したなら許さないぞ」という、

強いところがなくてはならない。

 

全力をつくして守るべき

自分のスペースを忘れてはならない。

 

 

 


悪いことも

少しはした方がいいなどという

誤解に陥らない人はならば、

 

当然、人とぶつかることがあるかもしれない。

人と会うときに

一時的に窮屈に感じられるかもしれない。

しかしその窮屈を我慢して、

自分に勝って、

エネルギーをたくわえてやったなら、

後々必ず、大きく伸びるだろう。

 


八方美人な世渡りの仕方は

機転が効いて

人にも好かれ、

いっとき都合がよくもあろうが、

永久に大きく発展できるためのポイントにならない。

将来やることがたくさんあるだろうと

希望と目標をもつ人の取るべき方法ではない。

 


自分はこれから未来に

やることがたくさんあって

だから、まさに若者なんだと認める人は、

普段から元気の貯蓄に

心がけなければならない。

 


青年時代は一生のうち

もっとも愉快な時代。

子どもは

「早く大きくなって青年になりたい」と思い、

老人は

「引き返して、

また青年生活を繰り返したい」とうらやむ。

それというのも、上で書いた理由で当然だし、

おかしいことなどない。

 

 

 

ところが、

青年時代のことを

単に楽しい時代とだけ考えるのは

ものすごい間違いだ。

 


植物の花が勢いよく咲き誇る季節が

もっとも美しい季節ということについては

みんなが賛成する。

けれども、この季節のことを

単に景色がきれいなだけの時と思うのは

間違いだ。

 


植物が花ひらく時は、

実をむすぶためのステップだ。

 


人の青年時代、

それはまさに

なしとげることにあらわれるはずの

思想と元気が

成熟しようとするタイミングだ。

 

花開くときは、

うるわしく勢いがあるとともに

虫もつき、

風雨にもいちばんダメージを受けやすいときだ。

 


それと同じく、

青年時代はもっとも愉快であるとともに、

またもっとも危険のあるときだ。

悪いことをしないように

もっとも慎むべきときである。

 

 

 

参考

 

 

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